2007年11月17日

「見えない織物 1 」 (置賜)

おばぁちゃん、おばぁちゃん、とんと昔、お話しして。
子供の声が寝室から聞こえてきた。
今夜もおばちゃんは孫にとんと昔を語り継ぐ。
こうして、何百年も人の心のありようが受け継がれていくんだろう。
設定:祖母/よし子  孫:剛志(小4)

「見えない織物」 第一回 (全二回)

むかしのお話よ。あの、剛志、年貢って知っている?
知らない!
そう、あのね昔は、日本の村々には、それぞれお殿様がいて、村を領地にして治めていたのね。ん、領地って言うのは、お殿様の持ち物のだってことなの。だから毎年、田で米を作ると、半分以上、お城にいるお殿様に納めなければならなくてね、お米を作った百姓さんたちは、そう、剛志のご先祖様たちだけど、自分たちは、お米を食べることができなかったよ。
それじゃ、なにを食べていたの。
そうね、なにを食べていたんでしょうね。
餅。餅なんか食べていたんじゃない。だってお米が食べられないんだったら………
アハハッ。そうね。餅ね。でも、餅って何で作るんだっけ?
アッ、餅も食べられなかったんだ。
餅も、餅米で作るんだものね。
えっ、餅って木に実るんじゃないんだ。
ハハハッ、どうして?
だってこの間さ、ママとパパが夫婦喧嘩したときにさ、ママガパパに、あなたってそんなに、やきもちやきだったのって言っててさ、それで、やきもちの木があるんだと思ってさ。
なるほど。そうか。やきもちやきの木ね。
違うんだ!
そんな木はもうおばあちゃんはすっかり枯れちまったね。
おばあちゃんの木は枯れちゃったんだ。
うん。
じゃ、おばあちゃんもお餅食べられないね。
喉につっかえちまったら大変だしね。
………間………
話がそれちまったね。いいかい、話の続をきして…
ん!
その、お城に納める米のことを「年貢」って言ったのね。
年貢……かぁ!
そう。でもね、ある年の夏、冷たい風が吹いて、お米が取ない年があったの。
お城に納める年貢もなくてね、村のみんなも困って、青い顔をして頭をかかえていたの。
そんなとき、お城から使いが来て、お米がなければ、金、三十両納めよっていう命令だったの。
ええぇ、そんなこと無理だよね。
そうね。無理な話よね。村長(庄屋様)のところでも、そんな貯金はなかったんだって。
三十両か。もし三十両を払うことができなかったらどうなる?
そうね。ただではすまないよね。
それじゃ、どんなことをしても何とかしなければならないんだ。
ちょうどそんなときにね、ある男が名乗りを上げたんだって。まだ若いけれども、面構えはふてぶてしく、少しずるそうで、ニヤニヤ笑いを浮かべていてね。
誰っ、その人?
悟介さんっていう人でね、村一番の知恵者だということで、以前から評判だったの。
悟介さんか。
そう。悟介さんは、村のみんなを前にして胸をはって、「おれさ任せろ」って言ったの。
次の朝、悟介さんは風呂敷を一枚懐に入れて出掛けていったの。